「打席に立ち続ける起業家を支える エンジェル投資家を増やし育てていく」エンジェル投資家 山本敏行さん

2024-03-13

  • インタビュー

打席に立ち続ける起業家を支えるエンジェル投資家を増やし育てていく

エンジェル投資家 山本敏行さん

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Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はエンジェル投資家の山本敏行さんにお話を聞きました。

山本敏行
昭和54年3月21日、大阪府寝屋川市生まれ。中央大学商学部在学中の2000年、 留学先のロサンゼルスでEC studio(2012年にChatWork株式会社に社名変更)を創業。 「自分がいなくてもうまくいく仕組み」、「日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方」 を出版し、いずれの著書もアマゾン売上総合ランキング1位を獲得。 2012年に米国法人をシリコンバレーに設立し、自身も移住して5年間経営した後に帰国。 2018年Chatwork株式会社のCEOを共同創業者の弟に譲り、翌2019年東証マザーズへ 550億円超の時価総額で上場。現在はエンジェル投資家コミュニティの「Power Angels」に注力している。2023年、一般社団法人日本エンジェル投資家協会設立。

投資条件や投資実績がわかる!山本敏行さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)

山本さんが審査員をされる「QWS STARTUP AWARD 2026」の応募は2026年1月13日(火)まで!

まずは、山本さんについて教えてください!

Chatwork創業者で、日本エンジェル投資家協会代表理事とエンジェル投資家コミュニティPower AngelsのCEOを務めています、山本です。

今はエンジェル投資家を増やして育てることに終始していますが、小学生の頃から自分でお金を稼いでいた生粋の起業家です。少し長くなりますが、昔の話をさせてください。

小学校の時、ラジコンが欲しくてコツコツ貯めていたお金をカツアゲされ、どうにかお金を手に入れる方法はないものかと思っていた時、母親の内職を目にします。1日1,000円ですが、月にすれば3万円。小学生にしてみたら大変魅力的な金額です。そうして母親を真似て内職小学生になりました。

高校生になると欲が出てきます。もっと稼げる方法がないものかと模索していたところ、在宅でできる仕事が載っている掲示板サイトを当時からITオタクな弟から教えてもらいました。早速、弟からPCを借りて自分で仕事を探し始めましたが、どの仕事も稼ぎは最大でも月3万円程度。内職と変わりません。

そこで、その散らばった在宅お仕事情報を整理してまとめて「月3万稼げるお仕事リスト」を2万で売ることを思いついたんです。そうして月20万円稼ぐ高校生になり、バイトが禁止されてるような進学校でネットで稼いでいることを理解できない同級生からは「犯罪者」というパンチの効いたあだ名をつけられていました。

大学でもネットビジネスは続けていましたが、株の運用益だけで日本での留学費用、生活費を稼ぐ台湾人の女性に出会い、恋に落ち、彼女を追いかけるために大学を休学してロサンゼルスの語学学校に留学しました。

(写真:スタートアップ起業家向け講座)

ちょうどそのタイミングがドットコムバブルで中小企業もホームページを持ち始めたので、留学中の2000年に「EC studio」を立ち上げ、企業向けにホームページの売上アップ支援事業を始めます。帰国後、最初は父親に反対されたりもしましたが、2004年に法人化するに至りました。

当初は、ホームページを使った売上アップ支援のツールやコンサルティングを約2万社に提供していましたが、ITツールを使いこなせている企業が全体の1%もないことに絶望していました。そんな中、「Skype」のチャット機能を法人向けに展開する事業に将来性を感じましたが、Skype社では法人向けのサービスを展開する計画は当時なかったので、当社が法人向けのチャットツールとして自社で開発したのが「Chatwork」でした。

2012年に米国法人をシリコンバレーに設立し、私も移住して5年間経営した後、 2018年にChatwork株式会社のCEOを共同創業者の弟に譲り、翌2019年には東証マザーズへ 550億円超の時価総額で上場することができました。

こう言うと極めて順調そうに聞こえるかもしれませんが、実はChatworkは30個目くらいの事業です。語られることのない失敗の山々を踏み越えて、今があります。

そんな山本さんがエンジェル投資を始めたきっかけは何ですか?

エンジェル投資は、2015年に初めてVCから資金調達したタイミングからちょこちょこやり始めていました。

シリコンバレーにいた時、毎日のように起業したい学生が「山本さん相談させてください!」と私のもとを尋ねてくるので、適宜相談に乗っていたんです。

そんな中、立命館大学から「優秀な学生がいるから御社で2週間、Chatworkのシリコンバレーオフィスでインターンを受け入れてもらえないか?」とオファーがありました。受け入れてみたら確かに大変優秀な学生だったので、ビジネスアイデアを授け、出資して法人化したら、ものすごい勢いで成長していくんですよ。

資金を出してちょっと教えたら、どんどん伸びてVCから資金を得てまた成長していく。「こういうの見てて面白いなー!」と感じましたね。

2社目は、学生から「相談乗ってください」と言われた流れで出資に至りましたし、3社目はグループ会社の社長経由で「この子に会ってあげてください」と言われた流れで出資に至りました。

Chatworkを弟に譲ってから、ふと「自分がまた事業を立ち上げるよりも、自分以上の起業家を大量に生み出す仕組みを作った方が日本にとって良いだろうな」と思うようになりました。そうして、起業家に出会って良さを見抜いて上場まで後押しできるエンジェル投資家を増やそうと、エンジェル投資家コミュニティPower Angelsを立ち上げました。

(写真:Power Angels エンジェル投資家新年会)

「日本のためになることをしたい」と思うようになったのは、ロサンゼルスに行った時からです。世界一の国だと思ってアメリカに行きましたが「アメリカ人、ポンコツばっかりやん!99%の凡人を1%の天才が動かしてる国だ」と思い知らされました。

一方、日本人は皆が60〜80点を採れる、勤勉な国民性がありますよね。それを思った時に「絶対、日本人の方が頑張ってる!こんなに頑張ってる日本人が報われるようにしたい!」という気持ちが湧き、以来ずっと私が取り組むビジネスには「日本のためになるビジネスかどうか」という判断軸があります。

現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか? 

基本的に、経営者の実現したいビジョンに共感できればジャンルは問わずに投資します。投資実績としては10年間で70社ほどです。チケットサイズは主に100万〜5,000万円で、投資フェーズはエンジェル〜プレシード 〜 シード 〜 シリーズAまでです。

領域は絞っていませんが、避けている領域はあります。私自身がエンジェル投資家のコミュニティを作って教える立場であることもあり、スポーツ・アート・音楽・エンタメなど、一般的に成功確率が低いと思われるところには投資しない傾向があります。

ただ、エンジェル投資家の中には、うまくいくかどうかより自分が好きなところに出資する方もいらっしゃいますし、全くそれを否定する意図はありません。

関係性ですが、まず月1でレポートを出してもらっています。数字や「今取り組んでいることTop3」、「出会いたい人や会社Top3」を報告してもらい、それを見て人を繋いだりアドバイスをしたりします。

他には、私の投資先を何十社か集めた山本チルドレン飲み会(通称:山チル飲み会)をたまに開催します。横の繋がりは重要ですし、その場で人を紹介し事業の後押しになることもあります。

魅力を感じる起業家はどのような人ですか?

いろんな指標はありますが、映画を見る前のように「この人のこれからの起業ストーリーを見てみたい」と思える方です。

具体的には、ちゃんとした領域選択の上、その領域に何かしら強みがあり、そのビジネスに対して話し始めたら止まらないほどの熱量がある人です。外から見たら「バカだなぁ」と思われそうな、それしか考えてないくらいのアツさがある人に出会うと「ちょっと待ってくれ!俺にも参加させてくれ!」と思わず出資したくなりますね。

なぜ盲目的にアツい人が良いかと言うと、起業したら基本的には10年以上それを続けることになるので、中途半端な動力源だとやはり続かないんですよね。

そのアツさが本物かどうかは、やり抜く覚悟があるかをこちらが真剣に問うた時にわかります。適当な気持ちだったり嘘だったりすると一瞬の間が開くものです。言葉だけでなく、周りの人から聞く話や日々のレスポンスなどの行動にも本気度が滲み出るので、それらを総合的に見ています。

今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!

日本にエンジェル投資家を増やし、上場まで後押しできるパワーエンジェル投資家に育て、結果として700億以上で上場するスタートアップをどんどん増やしていきたいです。700億円なのは、Chatworkが550億で上場したので「自分を超えてほしい」という思いからです。

そのために今は時間や労力の使い方として、Power Angelsと日本エンジェル投資家協会の活動に9割、残りの1割は学生起業家を増やすための「ユニコーン起業部」に割いています。

基本的に人がやらないことをやるのが好きなんですよね。皆が「起業家を支援するぞー!」と言うなら私は「エンジェル投資家を支援するぞー!」ですし、また、大人のための起業支援は山ほどあるので私はそれより前の段階の高校生のための起業支援をします。

(写真:Startup Grind Tokyo登壇後の集合写真)

それぞれの展望ですが、まずPower Angelsと日本エンジェル投資家協会の活動では、お金を出して終わりではなく「支援ができるエンジェル」を増やしたいです。お金だけあっても死んでしまう起業家が多いので。「お金だけ出して終わり」をハンズオフ、「困った時に頼ってね」をハンズイフと呼びますが、ハンズイフをハンズオフ化しない仕組みを作っています。

これは別に誰が悪いという話ではなく、エンジェル側が何をどう教えたらいいかわからなかったり、自分に教えられる何かがあるとも思っていなかったりするんです。良いリソースを持っているのに、それが当たり前になっているので起業家にとってありがたいリソースであることに気づけない。

「若いのに起業するほど優秀なんだから大丈夫でしょう」と、起業家の一側面だけを見て安心してしまうケースも多い。そんなエンジェルの支援を最大限引き出すのが、私のやっていきたいことです。

また、エンジェル投資家の母数自体ももっともっと増やしたいです。実はエンジェル投資家に向いている「潜在エンジェル」がたくさんいます。でもそれに自分自身が気がついていなかったり、スタートアップ起業家との出会い方や見抜き方、付き合い方がわからない人が大勢います。

なので、書籍「エンジェル投資家 実践バイブル」を出版しました。とにかく「そんなあなたはエンジェル投資家になりなはれ!」と多方面で呼びかけ、ノウハウや経験を惜しみなく伝え、潜在エンジェルを顕在エンジェルにしてパワーエンジェル投資家へと育てる活動を続けていきます。

(写真:2024/3/21発売の書籍「エンジェル投資家 実践バイブル」)

2年前から始めたユニコーン起業部は今、全国に70人くらいの高校生・大学生メンバーがいます。「高校生の頃からスモールビジネスを通して経営を学び、海外に留学してからスタートアップを起業し、ユニコーンを目指して上場していくモデルケースを作る」という、20年越しのプロジェクトです。

まさにこれは、16歳の自分が欲しかったものそのものです。20年かけて高校生を上場にまで導くのは、他の人にはなかなかできないことだと自負しています。

(写真:ユニコーン起業部の高校生起業家達とのZoom)

起業家へのメッセージは、「打席に立ち続けてください」です。

Chatworkは30個目の事業です。打率にしたら1割以下。プロ野球選手だったらとっくにクビです。それでも打席に立ち続け、バットを振り続けたから今があります。

なぜバットを振り続けられたかというと、目的が常に頭にあったからだと思います。上場するためにやっていたわけではなく「日本のために何ができるか」の通過点にChatworkがあったというだけの話です。「やりたいことをずっとやり続けただけ」という感覚でもあります。

皆さんも「何のためにやるのか」がそれぞれあると思います。その目的を叶えるためなら、手段はいくら試したっていいでしょう。それは失敗と恥ずべきことではありません。

ぜひ、目的を叶えるために、打席に立ち続けてください。私はそれをサポートするエンジェル投資家たちを増やして育てていきます!

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